3705人が本棚に入れています
本棚に追加
毎日あんたの世話をするのは、一緒に居たいからじゃないのよ……。
別にこいつのことなんて好きじゃなかった、むしろ嫌いだった。でも、中学三年のとき別々の高校に行くことになりそうになって、気づいちゃった……。自分の本当の気持ちに。
でも、なかなか素直になれなくて……。
今日だって鞄で後頭部殴っちゃったし……。アタシってホント、可愛くないなぁ…………。
楓はバフンと巨大なため息をついた。
「どーしたよ……、楓……。うぐぐ……」
それに気づいた誠は必死にペダルを踏みつけながら質問した。
楓は首をブンブン振りながら、乱暴に誠の背中をバシバシ叩いた。
「な、なんでもないわよっ! ……なんでも……」
「? まぁいいやっ! それより羅生坂だっ! クッソォ!!」
楓はホッと胸をなで下ろした。
幼馴染みの恋は実りにくいって最近読んだ小説にも書いてあった。相手は全部自分のことを知っているから。
たしかにって、思った。
アタシだって誠のことほとんど全部わかってるつもり。……恋って、相手の未知の部分に引かれて始まるものだとアタシは思うの。だから、なにもかもわかりきってる二人の間に恋なんて……。
最初のコメントを投稿しよう!