第一章 隣のアイツ

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 毎日あんたの世話をするのは、一緒に居たいからじゃないのよ……。  別にこいつのことなんて好きじゃなかった、むしろ嫌いだった。でも、中学三年のとき別々の高校に行くことになりそうになって、気づいちゃった……。自分の本当の気持ちに。  でも、なかなか素直になれなくて……。  今日だって鞄で後頭部殴っちゃったし……。アタシってホント、可愛くないなぁ…………。  楓はバフンと巨大なため息をついた。 「どーしたよ……、楓……。うぐぐ……」  それに気づいた誠は必死にペダルを踏みつけながら質問した。  楓は首をブンブン振りながら、乱暴に誠の背中をバシバシ叩いた。 「な、なんでもないわよっ! ……なんでも……」 「? まぁいいやっ! それより羅生坂だっ! クッソォ!!」  楓はホッと胸をなで下ろした。  幼馴染みの恋は実りにくいって最近読んだ小説にも書いてあった。相手は全部自分のことを知っているから。  たしかにって、思った。  アタシだって誠のことほとんど全部わかってるつもり。……恋って、相手の未知の部分に引かれて始まるものだとアタシは思うの。だから、なにもかもわかりきってる二人の間に恋なんて……。
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