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楓は再びシャツを握った。
「……ホントにどうした? 体調悪いのか?」
「……あんたはアタシのこと、わかりきってなんかない」
「はっ?」
「だって、アタシの本当の気持ち知らないでしょ……」
しばらく沈黙が流れた。
楓は慌てて口を塞いだが、すべて吐き出したあとだったので全てが手遅れだった。
「いや、意味分かんねぇぞ、おまえ。なんか変なもんでも食ったのか?」
相当考えに考え抜いた誠が口を開く。
楓は恥ずかしくなって赤くなった顔を見られないように、坂を登りきった誠の体を激しく揺らした。
「こっち見るなっ! 自転車は前を向いて運転する道具よ!」
「うわわっ!? バカッ、やめろ! わかってるよっ」
誠の頑張りもあって、生徒の平均的な登校時間に間に合った二人。
登校中の生徒は自転車に乗りながらイチャイチャ(?)する二人を見て、ニヤニヤしている。
そのとき女子生徒の黄色い声援と共に、目鼻立ちの整ったいわゆるイケメン君が誠達の自転車目がけて突っ込んできた。
「オハヨッ! 誠、楓っ! 朝ぱらから仲がよろしいことで」
「あーっ! 『龍』っ!! 誠に近づくなって言ってんでしょ! しっしっ! 離れなさいよ!」
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