ちぃちゃん登場

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 ちいちゃん登場 「キャー、可愛い!」 「ホント、子役かモデルみたいー」 「髪の毛、フワフワだよぉ」 「将来が楽しみだよねえ」  群がる女子高生。ちょっと興奮気味である。  が。 「何言ってんのぉ。可愛いなんて当たり前の事でしょぉ」  それまでおとなしく、されるがままになっていた幼い子供が、突然、高笑いをした。 手は腰に当て、高笑いする姿は何とも高飛車で、容姿の愛らしさを差っ引いても『嫌な感じ』がする。 この幼いながらも絶対的な美貌を誇る高飛車な幼稚園児は、キリン幼稚園の桜組に在籍する桜井千冬(さくらいちふゆ)。通称、ちいちゃん。 ちいちゃんは、現在、五歳になったばかりの年中さんなのだ。 流石に、女子高生たちもちいちゃんの様子が、おかしいのに気がついて静かになった。 「あたしはねえ、モトもいいけど、それなりに努力もしているの!若いだけで何の魅力もないアナタ達とは違うのよ!」  普通、そこまで言う?  ちいちゃんは、せっかくの愛らしい容姿も高ビーなために、それを引いてマイナスになってしまうという不幸な(?)幼稚園児だった。 「ちょっと何?このガキ!」 「いくら可愛くたって、この性格はヤバイって」 「こんなガキ、放っておいて行こ!」  今までちいちゃんをチヤホヤしていた女子高生達は、ガヤガヤと騒がしく去っていった。  それと入れ違いにやって来たのは、カッコイイお兄さまだった。  年齢は二十歳そこそこといったところだ。 背が高くて手足が長い、溜息が出るほどイイ男だ。 それなのに、子供の喜びそうな可愛い動物のキャラクターが大きくプリントされたエプロンなんかしちゃって、一体この人は何の仕事をしている人なんだろう? 「ちいちゃん、散歩中に勝手な行動をしたら駄目だって言っただろ!急にいなくなるから心配して探しちゃったよ!」  彼の名前は桜井真史(さくらいまふみ)年齢、二十五歳。ちいちゃんとは園児と保父の間柄であり、恋人である……というのは冗談で、叔父と姪の関係である。 「マー君ったら心配性ね。あたしは大丈夫よ。マー君なんかよりも、ずっとしっかりしているんだから」  マー君こと真史はちいちゃんを見て嘆息を洩らした。  このおよそ幼稚園児らしくない態度と性格、それは家庭環境に大いに問題があると真史は思っている。
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