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私のこの手を見て。私の手はこんなにも貴方の色に染まっているの。
私のこの瞳を見て。私の瞳はこんなにも貴方を映し出しているの。
私のこの口を見て。私の口はこんなにも貴方の名を呼ぶの。
私の体を見て。私の体はこんなにも貴方を知っているの。
私の、私のこの手を…
「おい、お前。」
粗野で下劣な声に少女は驚く様子も無く顔をあげた。
「この立て札、見えねぇワケじゃねンだろ?」
声の主は屈強な肉体を持つ大男だ。頑丈そうだが不細工な鎧に身を包んだ巨躯が屈み、鎧よりも数倍不細工な顔が、正面の小柄な少女を睨みつける。
一方、少女はブロンドの髪を後ろで束ね、真っ赤でくっきりとした瞳が良く見えるようにした器量の良い少女だ。真っ赤な瞳が左右対象で端正な顔立ちを際立たせている。無感情な表情を除けば、男性ウケの良い顔であろう。胸当てに皮のシャツを身につけ、下半身はホットパンツと腰から伸びたマントのみという、ワリと身軽な装備をしているが、背中に背負った短剣が、少女が戦いを生業にする人物であることをうかがわせる。
「ここからは俺達の縄張りだ、通るなら金を払えってなことが書いてあんだがよ。」
大男の方は、大方盗賊か何かのしたっぱであろう
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