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新宿北署~入口
室井は、署を見上げ佇んでいた。
あの事件後のはじめての新宿北署に思い耽っていた。
桜井杏子…、現実逃避の少女に掻き回されたあの事件を思い出しながら…。
目をつむり、自分自身の気持ちを確かめ…。
目を見開き、眉間にシワを寄せ歩き出す。
ドアを開け、中に入ると工藤が待っていた。
工藤「あんちゃん、久しぶりだな!よく帰って来れたな?」
室井「…君か…。」
工藤「相変わらず無愛想だな。で、新しい管理官さんよ。事件に付いては聞いてんのか?」
室井「ここへ向かう車の中で、報告書は読ませてもらった。」
工藤「じゃ、話は早いな。捜査本部に来てくれや!」
工藤は、歩き出す。室井も続いて歩き出す。
工藤「…湾岸署から外されたんだってな…。あの、約束を交わした刑事との再会に涙したあとなのにな!」
室井「………………。」
工藤「それより今回の事件、ちと面倒なんだ。容疑者も目撃者も無し…。わかったのは、害者の身元と死亡推定時刻だけだ。厄介な事件をやってくれたよ。ホシは。」
室井「害者は女性だったな…。」
工藤「あぁ、バリバリのキャリアウーマン。本田和代34歳。2004年に、IT会社設立後かなりの勢いで業績を上げた。今じゃ、トップクラスの腕利き社長だったそうだ。そいつが、いきなり殺された。怨恨の線で調べたら、出てくる出てくる。全員調べてたら時効迎えるんじゃないか?って思うほどの数だな…。」
室井「…警察関係者との繋がりは?」
工藤「そんなの調べてないよ…。まっ、居たなら気にかかってるからな…。居ないんじゃないか?」
室井は、口を一文字に閉じて立ち止まる。
工藤「どうした?あんちゃん…。」
室井「君に頼みがある…。」
工藤「あんちゃんの頼みなら何でも聞くぜ!」
室井「この事件の被害者と関わりがある警察官を徹底的に調べてほしい。」
工藤「…どういう事だ?つまり、警察が絡んでる可能性があるって事か?」
室井は、工藤を見上げ言った。
室井「この件は、誰にも言わないでくれ。警察の威信を崩したくない。マスコミにバレたら、警察は足元から崩れてしまう…。」
工藤「わかった、あんちゃんからの頼みは聞かなくちゃな」
室井「あとひとつ…。」
工藤「なんだ?」
室井「あんちゃんはやめてくれないか?」
工藤「…………わかった。本部長…。」
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