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由佳は目を細めて呟いた。
「………。ほんと胡散臭い記事。事実だとしても、この火事で関係者は全員死んだんでしょ?なんでこんな記事が書けんのよ?」
「だから…ほんとはただの火事だったのをもっともらしく脚色したんだろ?」
「そうよね…。死刑囚を集めた臨床試験だなんて…国が認める筈が…。」
「こんな事件あったっけ…?拓真、覚えてる?」
「だからー。別にそんなことはどうでもいいよ!!お宝だって関係ない。噂の心霊スポットなのは事実なんだから、ただの肝試しでいいじゃん!」
「まあね!俺こういう心霊スポットって初めてだよ!事実はどうあれちょっとワクワクしない?」
「はぁ?祐輔ってほんとガキだよね?」
「なんだよ…由佳は乗り気だったんじゃねーの?」
「まぁまぁ…どっちにしても明日のスキー場次第だから…ね?」
「そうそう。美紀の言う通りだな。拓真、そろそろあのじいさん帰ってくるんじゃない?そのスクラップブック、もとの場所に戻してきたほうがよくね?」
「あ…もうこんな時間か。確かにあのじいさん怖そうだからな。」
もう17時半だった。
5人は色んな思いを胸に、部屋を引き上げる。
蓮は窓から外を見た。吹雪きはもうだいぶ収まっていたが、いつの間にか日は落ち、辺りは暗くなっていた。
ぼんやりと外の雪景色を眺めていると、一台の四輪駆動車がペンションの入り口に止まった。あのじいさんだ。
買い物袋を両手に持ち、中に入って来る。
……外にいるって言ってたけど、買い物にでも行ってたのか?
……普通ペンションに客残して出掛けるもんか…?
蓮は訝しげに源の姿を追ったが、ペンションの中にその姿が消えると、厚手のカーテンを閉めて、ベットに腰掛けた。
お気に入りのジッポライターでタバコに火をつけて、こめかみを指で押さえる。
揺らめく煙を眺め、気が付いた様に立ち上がると、二重になった窓を少し開けた。
空気が抜ける様な音の後、冷たい夜風が部屋に入り込む。
暫く新鮮な空気を肺に送りこんでいると、だんだん寒くなって開けた窓を慌て閉めた。
……廃墟…か……。
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