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「うわっ!!雪が深いとこにはまっちまった!」
蓮たちは車を降りた。祐輔が足を膝まで雪に突っ込んでいた。
2階建てなのに、こうして見上げてみると研究所廃墟は大きく見える。
エンジンを止めると恐ろしいほどの静寂に包まれた。雪が重みで木々の枝から落ちるササササ…という音が辺りから聞こえる。
「…思ったより寒いわね。」
由佳は腕を組み、寒そうに二の腕を擦っている。
「見て!あれウサギの足跡かな?」
「子供か?祐輔…。」
「…ありゃイタチだろ?」
「蓮…。」
「ん…?どうした?美紀?」
「やっぱり……やめない?」
「どうした?怖くなったのか?」
「…ほら。…崩れてるところもあるし、危ないんじゃ……。」
雲行きを察したのか、拓真が大袈裟に言った。
「大丈夫だよ。崩れたところは入らないようにすればいいんだ。」
「そうだよ。ここまで来て帰るなんてつまんないよ。せめて入り口だけでも行こうぜ。」
祐輔が明るく同調するが、美紀の色白の顔は更に青ざめていた。寒さのせいもあるだろうけど、明らかに怯えている。
「…美紀、ちょっとだけ中の様子を見て、危なそうだったら帰ろう?」
由佳は震える美紀の手を握る。
「…拓真、中に入るにしても、この寒さだから長居はやめようぜ。」
「…しょうがない。わかったよ。でも危険がないようなら1000万円の地図を探す時間も少しくれよ。」
「そういえば見つかった時は山分けだよね!」
「一人200万だな?」
「…美紀、…大丈夫か?」
由佳は美紀と手を繋いでいた。
美紀は頷き、少し微笑んでみせた。
「祐輔、懐中電灯持ったの?」
祐輔はジャンバーのポケットから懐中電灯をだす。
「…では、行きますか。」
蓮たちは正面入り口に歩きだした。入り口と思われる扉はガラス製の自動ドアで、両開きの片方はなくなっていた。
そこから中のロビーに入れそうだが、入り口の中は薄暗くて良く見えない。
入り口の段差を一段一段上がり、ついに蓮たち5人は研究所廃墟内に足を踏み入れた。
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