ある雪山のペンションにて……

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 突然…本当に突然、玄関のドアが勢いよく開く。同時に外の吹雪きの轟音と冷気がロビーに流れこんできた。  蓮たちは一様に、その音と冷気に驚き、反動でギシギシ音をたてるドアに注目した。温泉で暖まった身体が冷却される。  ゴーグルをつけたままの源さんが、中に入ってきた。  源さんは入ってきた時と同じように勢いよくドアを閉める。外気による抵抗があるからなのだろうが、何か苛立っているようにも見えなくもない。  そしてこちらに振り替えると、曇ったゴーグルをそのままで一歩一歩ゆっくりロビーにいる我々のほうに真っ直ぐ歩いてくる。入り口から一番近いソファーに座っていた拓真の前で止まった。思わず拓真は身構える。 「………退屈でしょう?ここにはテレビもねぇですからね。トランプと花札ならそこの引き出しに入ってます。夕食は18時ですが、私はやることがあるので暫く外にいます。」  それは蓮たちに話しかけたというより、台本を感情を籠めずに読み上げた様に平淡に響いた。源さんはラジオを置いてある棚の引き出しを指差す。  徐々にゴーグルが室温で曇っていき、その瞳が見えなくなる。そのせいか、かなり異様な雰囲気に見えた。  暫く時間が止まったかのような沈黙のあと、源さんは蓮たちの反応を確かめもせず、踵を返し、また勢いよくドアを開け外の吹雪きの中に消えていった。  吹雪の音が残響する沈黙の中、蓮は口に含んだビールを漸く飲み込む。 「……な…なんなの…?」  由佳がかろうじて沈黙を破って呟いたが、拓真と美紀は目を丸くしたままで、祐輔の顔は引きつっていた。  祐輔と拓真の持つタバコの煙が二本、所在なくユラユラと揺れていた。
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