ある雪山のペンションにて……

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 ペンションの間取りは1階がロビーと管理人室、浴場、台所などで、客室は全て2階にある。  蓮と祐輔が2階の部屋に戻り暫くすると、拓真と美紀がバタバタと部屋に入ってきた。 「蓮!下の書庫みたいな部屋に、面白いモンがあったぜ!」  拓真は一冊の古びたスクラップブックを持っている。 「それ…勝手に持ってきちゃっていいのかよ?」 「そんな事はいいんだよ!それよりこれ見てみろよ!」  スクラップブックには古い新聞記事や雑誌の切り抜きが4枚貼られていた。興奮気味の拓真から、蓮はそのスクラップブックを受け取る。拓真の後ろにいる美紀を見ると、美紀は苦笑いをしていた。  祐輔が蓮の肩ごしから顔を覗かせる。  蓮はその記事に目を落とした。 【アークファーマ研究所の恐怖の実態!?】 【クラウンファーマ、アークファーマを買収決定】 【アークファーマ研究所、謎の炎上と1000万の地図!?】 【実験台の司法取引!!闇に包まれた宝の地図!!】 「…。なんだこれ?」  祐輔はきょとんとしている。 「知らないのか?噂の心霊スポットだよ!廃墟になった製薬会社の研究所の事だよ。オカルト雑誌に載ってたのを見た事あんだけどさっ!この近くにあるんだよ!!」  拓真はどこから持って来たのか、この周辺の地図も広げた。 「…あのなぁ。拓真…、ひょっとして、お宝の地図も見つかるかもしれないから、そこに行ってみたいっていうんじゃないだろうな…?」 「さすが蓮!その通りだ!」 「へぇ。確かに面白そう。」 「アホか祐輔。お宝なんてあるわけないだろ?大体この記事5年も前のだし、スポーツ新聞と怪しい雑誌の情報なんて当てにできるか!…そもそもこのくそ寒いのに肝試しか?」  蓮はスクラップブックを閉じて拓真に返した。 「あのな、最悪スキー出来なかったらどうすんだよ?3日間ダラダラ過ごすのか?時間の無駄だろ?お宝はついでだよ。別にあってもなくてもいいんだ。」 「…確かに退屈だよね。」  祐輔は同調して蓮を見る。蓮は口に出かかった否定的な言葉を飲み込んだ。  タバコの煙をダルそうに吐き出す祐輔を見る。  蓮は仲間を見渡す。苦笑いの美紀と目が合った。 「…美紀も行ってみたい?」 「え?…わ…私はちょっと…。肝試しとか苦手だし…。明日はスキー出来るかも知れないし…。」 「そうだよね…。そもそも…。」  突如部屋のドアが開く音がして、蓮の反論を遮った。
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