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虚を付かれて驚き、皆の視線が扉に向く。
ファッション雑誌を片手に持った由佳が、不機嫌そうに部屋に入ってきた。
「ちょっとさっきからうるさいじゃない?みんなで何やってるの?」
「由佳…ちょっとね。」
「うん…?何それ?」
「由佳!ヤバイもの発見だぜ。これで退屈しないで済みそうだ。」
てっきり「バカじゃないの?」と切り返す由佳だと思ったが、以外にも興味を示した。
明日吹雪きが収まったとしても、スキー場が休業しないとは限らない。そうなれば恐らく退屈すぎる1日で、せっかくのこの旅行も散々だ。
そういえば、退屈が一番嫌いなのは由佳だった。
お宝なんてひいき目に考えても眉唾物だが、何もしない退屈に比べれば、季節外れの肝試しの方がまだましだというのが結論となった。それにいくら可能性が薄くとも、お宝があるかも知れないという副賞があるのが大きく影響した。
拓真がそれを巧みに熱弁し、祐輔が大袈裟に同調する。由佳は記事を静かに眺め、珍しく反論しない。こういう態度の由佳は、少なからず興味津々なのだ。
蓮と美紀は苦笑いしながら取り敢えず話しを聞いていた。否定的な言葉を飲み込む。どちらにしろ非現実的な話しだと感じていたが、退屈よりマシだったからだ。
そして、興奮気味に雄弁する拓真の話しは、いつも荒唐無稽な事でも人を引き込む魅力があった。
そうして、あくまでスキー場が明日も休業だったら…という条件が付き、気が進まなかった蓮と美紀も、結局は納得したのだった。
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