~第③章~天使

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それから、しばらく沈黙が続き、拓真と雅尋に会った。 「おーい!!昴ー!!通り過ぎんなよー」 昴はずっとソラとの会話をしていたので拓真の声にも気付かず、周りにも注意がいかなかった。 「あ!!ごめん!!今戻るー。」 「昴、前見ろ、前!!」 昴が後ろの拓真と雅尋を振り返り、戻ろうとした時、拓真が一生懸命前を指差して言っていた。 「へ?前?」 ぼーっとしていた昴は拓真の一言で我に返った。 今まではいなかったはずのネコが突然目の前に現われたのだ。 「わぁー!!退いてー!!」 ネコはビックリしてその場から動けないようだ。 (やばい!!ぶつかる!!) 昴はブレーキをかけているが弱くてなかなか効かない。 (そんなぁ。大事なときに…!!) ネコとぶつかりそうになった瞬間、昴はまるで羽根が生えたようにネコを飛び越していた。 否、本当に羽根が生えていた。 (…!?こんな時に羽根なんて出るのかよ…。) [それは昴の身を守るための天使の力。自分で出した力よ。] (そんな力出してたんだ…。) 昴が着地して振り返ってみるとそこには一時停止のように人や物が止まっていた。 (これも何かの力?) [えぇ。これは私がやったの。ここは1秒の世界。昴の世界の周りにとって1秒という時間のなかで私たちは5分間だけいられるわ。その間に昴の出した羽根の事を消去させてもらうわ。] 「あぁ、だから動かないわけね。ま、それに羽根見られると何かと不便だしね。」 [そうね。人間に羽根があるなんてないものね。 じゃあ昴、思いっきり転けて♪] 「は?何で!?」 [羽根を隠すための代わりの記憶よ。それとも羽根をばらしてもいいの?] (それ脅しだって…) [グチグチ言わないの。早くしないとこれ解けちゃうからね。] 昴はソラの言うことを大人しく聞いた。 ガッシャーン!! カラカラカラ… 「痛ったぁ!!」 転がった反動で自転車のタイヤが虚しく回っていた。 昴は思ったよりも激しく転けたので昴の体にかなりの痛さが伝わった。 するとそれと同時に1秒の世界は解かれた。 「昴ー。平気かぁ?」 「大丈夫かー?生きてるかー?」 拓真と雅尋が笑いを堪えながら手を差し伸べた。 「死んじゃいないよ。それよりお前等笑ってるだろ…。」
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