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  菫に気付かれないよう溜息を吐きながら窓越しに空を見上げる。   俺の心境を表しているかの空模様。   薄暗くて今にも大雨が降って雷までなりそうなのに、あと一歩のところで踏み止まっている感じ。   憂鬱で溜息しか出なくなるな。     「菫は先に帰って資料集めててくれ」     「分かりました。では髪を付けますね」     また溜息の種が出てきた。   俺の髪はショート。   でも病弱のお嬢様イメージは、ロングに少しウェーブがかかっている感じだと母さんだけでなく菫も言う。   男としてのプライドで、髪は絶対ショート以外はしないと断言した俺に突き付けられたのは…かつらだった。   正確には付ける髪。   ウィッグだか何だかっていうものらしい。   それを外して良いのは家だけだったんだけど、外を歩いていた時に何故だか空からガムが降ってきて、見事頭にジャストヒット。   だから外して、さっきまで菫に取ってもらってたわけだ。     「お前らの考えが分からん。なんで病弱=ロングウェーブなんだよ。ショートでも良いじゃん」    
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