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無意識に目でそれを追ってみると、恭介の瞳に映ったのは一匹のツバメであった。
「…………。」
多くの人が道を行き交うその上空で、忙しく飛び回るツバメを、恭介は不意に普段とは全く異なる眼で見つめる。
この何気ない行動に何の意図があり、何を思っているのかは、誰にもわからない。
…ほどなくして恭介の表情はいつも通りに戻る。
それと同時に恭介は一言呟く。
「…そうか、あと少しか…。頑張れよ。」
恭介は飛び回るツバメに向かって敬礼の様な動作を送った。
相変わらず唇はつり上がっていたが、それに反して瞳はどこはかとなく曇っていた。
ツバメは恭介の礼に応えたのか、恭介の頭上を切り、どこかへ飛び去っていった。
「…へっ、わかったのかね、俺の言葉が…。」
恭介はツバメが飛び去った方角を見つめ、一人笑んだ。
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