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クロは再びベッドへと帰り、煎餅をかじり始めた。
「私はパートナーを探す旅をしていたんです。アメリカはその旅で長くお世話になった国なんです」
「へー、悪魔も大変なんだな」
啓護はアメリカの地図を思い浮かべるのと同時に、クロがアメリカを旅している姿も想像してしまった。
その姿はあまりに不恰好で思わず吹き出してしまった。
するとそれに気付いたクロが不機嫌そうな目線を送ってくる。
「シャーラも元気にしているでしょうか…」
クロは煎餅の表面をペロペロと舐めながらふと呟いた。
「シャーラって?」
「アメリカでお世話になった家の娘です。啓護より一つ上の女性です」
クロは懐かしそうに目を細める。
「どんな娘なの?」
とうとう啓護は教科書を閉じ、体をクロに向けた。
もう飽きたのか、と思いつつもアメリカでの思い出を蘇らせてみる。
「そうですね、明るく元気な娘でしたよ」
クロが思い出話をしようと口を開くと、部屋の外の廊下をドタドタと喧しく駆ける足音が聞こえてきた。
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