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塀の向こう側から子供たちが駆け回る音が聞こえる。
携帯の時計を見てみると、六時を過ぎていた。
最近の子供の門限は甘いな、なんて考えながら啓護は分厚い本のページを捲る。
すると、深い紫色の髪を頭の上で二つに結った小さな少女が啓護の頭に飛び蹴りを打ち込んだ。
ごん、と鈍い音と同時に啓護の頭だけが右に傾いた。
「…って。何すんだよ、クロ」
いきなり蹴ってきた少女――クロを啓護はきつく睨み付けた。
しかしクロは平然とした表情で小さな鼻から強い鼻息を吹いた。
「どうでも良いですから、早く集中して下さいね」
クロはムスッと膨れながら、啓護が捲っていた本を指さす。
啓護は「はいはい」と面倒臭そうに返事を返すと、再びページを捲る。
ページを捲る度に古臭い臭いが鼻先を掠めた。
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