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部屋ではクロが何やら一人で喋っていた。
啓護は邪魔をしないように静かにドアを閉め、机に向かう。
「そうですか…はい、大丈夫だと思います。はい…分かりました」
しかしクロの手には受話器のようなものも、携帯のようなものも握られていない。
それどころか、いつの間にかに貼られたポスターのような紙に向かって喋っている。
だが、そのポスターには意味不明な魔方陣のような図が描いているだけで、音声などは全く聞こえない。
端から見ればクロが真剣な表情で独り言を呟いているようだ。
その何ともおかしな姿に笑いを堪えながら、啓護は机に備え付けられている本棚から悪魔の教科書を引っ張り出した。
「その仕事、承りました」
クロはポスターに向かってそう言うと、丁寧に頭を下げ、立ち上がった。
どうやら話が終わったようだ。
壁に貼ってあったポスターを剥がし、それを丁寧に丸めると、自分の住みかにした部屋の隅に立て掛けた。
そしてピョコンと啓護が読んでいた教科書の上に来た。
クロがページを隠してしまっていて勉強にならない。
「誰と喋ってたの?」
啓護はクロを掴み、机の端に寄せる。
「主人様です。新しい仕事が入りました」
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