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「啓護、起きなくていいんですか」
どこからかクロの声がし、啓護は薄く瞼を開いた。
「煩いな…もう少し」
しかし、啓護はそのまま寝返りを打ち、落ちた。
ドンッという鈍い音が脳内で響き、目眩がする。
どうやら昨日は勉強したまま机で寝てしまったらしい。
そして、呼んでいたクロは机の横に掛けていた鞄の中から顔を覗かせていた。
「急がないと遅刻しますよ」
眠い目を擦りながら時計を見ると、いつもより四十分も遅い。
慌てて起き上がり、朝食も食べずに着替えをする。
「何で起こしてくれないんだよ」
「起こしましたよ。何度も」
忙しく着替えている啓護にクロはのんびりと答える。
「ああ、どうせクロも付いてくるんだろう」
半ば諦めたように言うと、クロが入ったままの鞄を握り、家を飛び出した。
「勿論です。いつ天獣が来るか分かりませんから」
だろうね、と啓護は無言で納得し、鞄を優しく自転車の前カゴに入れた。
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