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しかし、啓護はそれどころではなかった。
教壇に立っている金髪の生徒と目が合った瞬間に背筋がビキッと鈍い音を立てた気がし、額からは嫌な汗が吹き出す。
「ハジめまして。アメリカからキました、シャーラっていいます」
アメリカから来たと言う割りには達者な日本語に生徒達は「おぉ」と感嘆を上げた。
シャーラがぺこりとお辞儀をすると、肩に掛かった金髪がスルリと落ちる。
「君の席は…あの真ん中だ」
こう言う場合、突然来た転校生というものは俺の隣に来るはずだろう、と窓際の一番後ろの席からシャーラの背中を睨んだ。
「来ましたね」
鞄から少しだけ頭を出したクロはどこか面白そうに目だけで笑った。
啓護は「黙ってろ」と小声で言い、鞄のチャックを閉めて机の横に掛けた。
担任がホームルームを終え、教室を出ると、クラスの女子生徒がわっとシャーラを囲み、質問攻めにしている。
「よくやるよな」
中村は席に座ったまま、頬杖をつき、シャーラを囲んでいる女子生徒を眺めている。
「あ、あぁ」
呑気に眺めている中村とは違い、啓護は止まらない汗を手の甲で拭いながら、心配の目で人だかりを見る。
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