悪魔の心得

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取り敢えず啓護は両手を前へ出し、目を瞑って精神を指先に集中させる。 心臓がドクンと強く脈打ったのを合図に素早く宙に円を描く。 「暗黒の炎よ、前方物体にて…発動」 啓護がそう唱えると、描かれた円から激しく炎が吹き出し、木の葉どころか枝まで燃やしてしまった。 真っ黒になった枝は、ゴトリと鈍い音を立てて地面で砕けた。 その様子を隣で見ていたクロは駄目だと言うかのように首を左右に振る。 この実践は三度目で、三回とも枝ごと燃やしてしまったのだ。 それは精神力と技術の問題で、体内に流れる力を無闇に放出すれば、余分な力まではたらいてしまう。 かと言って、あまり出さなければ力が足りず、思うように力を使いこなせない。 一見、便利そうに見えるが、実は細々として難しいものだったりする。 無言で砕けた枝の処理をすると、啓護は冷たい芝の上に腰を下ろした。 動いていて気付かなかったが、随分と風が冷たく、気持ちの良い涼しさである。 思わず目を瞑り、風を体いっぱいで感じ取ってしまった。
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