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クロは塵取りの中で静かに白い煙を立てる焦げた枝を覗き、ゆっくりとした足取りで啓護に近づいた。
「疲れましたか?今日はこの辺にしましょうか」
肩から腰まで覆う真っ黒なマントが冷たい風を受けて揺れている。
「んー」
啓護は曖昧な返事を返しながらそのまま寝転がる。
ふと閉じていた瞼を開くと、淡い紫色の空に小さく星が輝いていた。
「まずは呪文を覚えましょう。そろそろご飯ですし」
啓護は転がしていた体を起こすと、制服のポケットから携帯を取りだし、時間を確認する。
デジタル時計は七時ちょっと前を示していた。
「兄貴も待ってるかな」
そう呟くと、啓護はそのまま跳ね起き、肩にクロを乗っけて歩き始めた。
啓護が術の練習をしていたのは啓護が住むマンションの下にある小さな公園だった。
もちろんその公園もマンションと同じ管理下である。
密かに後で謝らないとな、と思いながら啓護は首を項垂れた。
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