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無用心にも玄関の鍵は開けっぱなしで、部屋の奥からは聴き慣れた音楽が流れてくる。
多分、兄貴が帰ってきているのだろう。
靴を無造作に脱ぎ捨て、クロを自室に置いてからリビングへ移動する。
予想通り、兄貴が台所で夕御飯を作っていた。
兄貴の名前は神原祐司、大学二年生だ。
いつ大学に行っているのかは知らないが、いつも部屋で寝ているか、出掛けている。
まともに顔を合わすのは夜ぐらいだ。
「おかえりー」
台所から顔を覗かせた表情は機嫌が良いようだ。
すぐに調理を再開し、トントンとリズムの良い音聞こえてきた。
顔こそは強面だが、実は家庭的だという事はきっと家族しか知らないだろう。
「晩飯なに?」
啓護は顔を覗かせる兄貴に尋ねると、兄貴はにっこりと笑って「ハンバーグ」と嬉しそうに答えた。
兄貴の十八番であるハンバーグは絶品だ。
啓護は「出来たら教えて」とだけ言うと、自室に戻った。
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