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「そう言えば、クロがどこから来たのかとか聞いてなかったね」
啓護はしばらく教科書を読んでからクロに声を向けた。
どうせ集中力が切れたのだろう、と易く予想したクロは壁に掛けられた時計を横目で確認し、集中力の短さに眉を寄せる。
「どこって場所ですか?」
「そう。まさか隣町から越してきた訳じゃないだろう」
ははは、と短く笑うと、啓護は視線を教科書に戻す。
「それはそうですね。隣町ではありません」
冗談で言ったのだか、クロは真面目な表情で返してきた。
「隣の国から来たんです」
「え?」
思いもよらぬ訂正に思わず教科書からクロへと視線を素早く移動させた。
「隣の国って…中国?」
「遠い隣の国です」
クロは啓護の机に飛び乗ると、地図帳を引っ張り出してパラパラと捲る。
「ここ、アメリカです」
「あ、アメリカ!?」
思わず叫んでしまい、兄貴に気付かれないようにすぐに口を両手で覆った。
「ってか、隣って言わないし。なんでアメリカなの?」
地図帳のページに座っているクロを払い退け、元の位置に片付ける。
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