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気だるい授業も終わり、放課後の解放感を味わっていた。
日が沈んでしまうと、寒い季節だ。
「さみぃ…」
一人つぶやく声。
先ほど買っていたココアの缶をギュっと握った。暖かい。
冷たい風とココアの温かさを肌に感じながら、自転車置き場へと向かった。
鞄をカゴに放り込み、ウォークマンをセットする。
猫に会ったのは、そのときだ。
またぎかけた足を下げ、猫をみた。
「かわいいなァ、はは」
猫は足に体をこすらせ、時折見上げてくる。「かまってかまって!」そう言っている気がした。
冷たいコンクリートの上に、腰を降ろしたら、猫はさっきより思いきり体を擦りつけてきた。
撫でてやるとお腹を見せて前足をクルクルさせて、俺の手をパシパシと叩く。
「ニャー、…ミャー」
クリーム色のふわふわの毛で暖かそうな体にマリンブルーの目の猫。
こんなに可愛いらしいヤツなのに、捨ててしまう人がいるのか…。今いくらコイツをかまってやっても、飼えないのなら俺も同じか…。
いつのまにかに猫はあぐらをかいた俺の上で丸まっていた。
…とても幸せそうに。
…あぁ、そうなのか。
…この猫はきっと、
…この猫もきっと、
…温かさが、
…優しさが、
…幸せが、欲しかったんだ。
しばらくずっとそうしていた。
風も更に冷えた頃猫は、スルゥと地面に降りて、
「ニャー…」
とだけ鳴いて何処かに行ってしまった。
帰り道、幸せそうだった猫と悲しさを思いだしては、目の前の景色が、
揺れた。
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