第二話

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西口を入ってから京急線の改札まで、人込みを掻き分けて進むと約六分かかる。 杏菜は誰かの靴に話し掛けようと下を見ながらターゲットを探した。    すると、かすかだが、靴の声が聞こえてきた。    『くぉ~…今日もキてるぜ、こりゃぁ!堪まんねぇなぁ~~~!』    杏菜は神経を集中させ、その声がスーツを着た中年のサラリーマンの靴のものだという事をつき止めた。 やっぱり靴は話すのだ。 杏菜はその人の後ろについて行くようにして靴に話し掛けた。    「あの、靴さん…あなたはこれからどの路線の電車に乗るんですか?私は京急なんですけど…良かったら途中まで何かお話しませんか?」    OLの靴のように、このサラリーマンの靴もすぐに言葉を返してきた。 しかし、先程のOLの靴とは雰囲気がだいぶ違っていた。    『なんでぃ、嬢ちゃん!俺っちに話し掛けてくるたぁ勇気があるじゃぁねぇか!』    杏菜はビクッとした。靴にも不良っているんだ、と思ったからだ。 しかし、靴はこう続けた。    『くっ~…嬉しいねぇ!しばらく話し相手がいなかったもんでよぉ。俺っちはこのまま東口に出るんでぃ。そこから"たくせぃ"に乗って帰るのょ!京急ならちょうど通り道だ!旅は道連れ世は情け。話の杯を交わすのも悪かぁねぇってもんよ!』    杏菜は安心して、よろしくお願いします、と挨拶し、気になっていた事を尋ねてみた。
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