第二話

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「さっき、何かがキてるっておっしゃっていたのが聞こえたんですけど、一体何がキてるんですか?」    よくぞ聞いてくれた、と言ってサラリーマンの靴は話し始めた。 『俺っちはよ、こう見えてもまだこの男とは一ヵ月程しか付き合いがねぇのょ。まぁ言うなれば"おにぅ"ってやつよ。だがよ…この男の足ときたら、もう臭いのなんのって!三日で俺っちはやられちまったんでぃ!!でもよぅ、本人も気にはしてるみてぇで、毎晩俺っちに"しぅぷれぃ"っつー煙を突き付けた後、足の代わりに何か入れやがる。俺っちは何が入ってるのかは残念ながら分かんねぇんだが、とにかくそれが気持ち悪くてよぅ、嫌で嫌で堪まんねぇのょ!なのに一日が終わる頃にはこの臭さ!全く効き目はありゃしない!まぁ流石にもう一ヵ月も経ったからよぉ、俺っちの運命とやらに諦めもついてきたが、この臭いのせいで、話し相手がいないのだきゃぁ勘弁なこったぁ…くぅぅ…‥」 靴の声はオロオロと泣いていた。    杏菜は、臭いのせいで友達の出来ないサラリーマンの靴を慰め、また見掛けたら声をかけると約束して、靴と別れを告げた。    杏菜は改札を通過する時、ポツンと独り言をこぼした。 「運命とやらに諦めもついてきた…かぁ。」
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