夏・月・残された時間

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リンと付き合い始めて、はや一ヶ月。 季節は夏の真っ只中 たわいもない事で笑い たわいもない事でケンカし、 どちらからということなく、仲直りをする。そんな普通のカップルのような日々がいつまでも続くものだと思っていた。 そんな、ある日の事 「海って、どんな感じなの?」 テレビの“夏のオススメ!デートスポット”という特集で海が紹介された時、ふと 彼女が口を開いた。 「海か、う~ん。なんていうか、広くて、大きい!」 子供じみた語彙でしか、表現できない自分が恥ずかしい。 「そうなんだ!広くて、大きいか。一度でいいから見てみたいな」 「見た事、ないの?」 「うん、、物心ついた頃にはもう、ここにいたから」 彼女は、少し寂しそうにテレビを眺めた。 連れて行ってあげたい。 そう、純粋に思った。 けれど、俺も、リンも外出を禁止されている。 「・・行こっか」 それでも、俺はリンを連れて行ってあげたかった。 「 えっ 」 「海に、行こう」 そう、固く決心した。
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