夏・月・残された時間

4/5
前へ
/44ページ
次へ
夜の10時、消灯時間になった病院は、いつもより一層静けさを引き立たせていた。 予定通り、リンの病室に向かう。 病室に着くと、軽くノックをして中に入った。 そこには、月明かりをバックに私服姿のリンがいた。 白いワンピース 長い黒髪が、月明かりに照らされ、 彼女は、天使のように見えた。 「こんばんわ、・・これ似合うかな?」 そう、問いかけてきた。 「・・・」 あまりの綺麗さに、俺は、言葉を発する事ができなかった。 「・・やっぱり、似合わないのかな。。」 下を向いて落ち込んでいる彼女を見て俺は、正気を取り戻した。 「いや、違うんだ!その、あまりに綺麗だったから、見とれてて。」 こんな恥ずかしい言葉をよく言えたものだと。今の自分に心の中でエールを送った。 「 ホントに? 」 上目遣いに問いかけてくる、彼女を凝視できなかった。 「ホント!だから、早く海に行こ。」 恥ずかしさを隠すため、リンの手を引いて自転車が置いてある非常口に向かう。 あらかじめ、巡回ルートを確認していたので見つからずにすんだ。 非常口前に着き 自転車の荷台に彼女を乗せ、海へと向かった。
/44ページ

最初のコメントを投稿しよう!

150人が本棚に入れています
本棚に追加