夏・月・残された時間

5/5
前へ
/44ページ
次へ
海へと着いた俺たちは、月の光に反射してキラキラと輝く砂浜に腰かけた。 「キレイ、」 そう彼女は呟いた。 「キレイだよな。」 二人して、静かな砂浜にいると世界には俺たち以外の誰も居ない。そんな、錯覚を起こしてしまう。 時間なんか、なければいい。 このまま時が止まればいい。 そんな事をいくら考えても、リンの時間は変わらない。 後どれくらい一緒に居られるのだろう。 後どれくらいこんな幸せな事を迎えることができるだろうか。 そんな事を考えていると、隣から声が聞こえてきた。 「・・ありがとう。」 振り返ると、唇に暖かな感触があった。 それが彼女の唇だとわかると、俺は目を閉じた。 口と口を合わせるだけ、そんな子供じみた行為だった。 けど、俺は、幸せだった。 この時間が永遠であると信じて。
/44ページ

最初のコメントを投稿しよう!

150人が本棚に入れています
本棚に追加