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どうしてリンなのだろう
俺は、ベッドの上で眠っているリンを見ながらそんなことを考えていた。
あの日から、もう4ヶ月が過ぎたが、リンは未だに目を覚まさない。
けれど、俺は信じていた。リンが目を覚まし以前と変わらない笑顔で微笑んでくれると。
「今日は、クリスマスだね」
だから、俺は笑顔をつくり、リンに向かって話しかけた。
「・・・」
もちろん、返事は返ってこない。
静かな病室に俺の声だけが響き虚しさだけが残った。
俺は、そんな雰囲気を変えるためテレビをつけた。
そこには、この町の風景が映されていた。
楽しそうに会話をしているカップル、そんな光景ばかりが続いていた。
どうしてこんな事になったのだろう。
俺たちも、本来ならあんなふうに過ごしていたはずなのに。
感傷に浸っていても仕方ない。
俺は、あらかじめ買っておいたケーキとプレゼントを取り出した。
小皿に自分の分と彼女の分を取り分ける
「いただきます。」
一人ケーキを食べ始める。
外を見ると雪が降っていた。
ホワイトクリスマス、こんないい日はないはずなのに。。
俺は、リンの顔を見た。
以前と変わらないその風貌は、今にも話しかけてくれそうな気さえした。
「俺は、ずっと君の傍にいるから。」
「メリークリスマス」
そう言うと、プレゼントを枕元に置く。
「じゃあ、また明日くるね」
俺は、自室へと向かって歩き始めた。ドアノブに手をかけた時。
「けん・・いち」
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