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10年前のユイが出たCMは6本あった。
父親がチョコレートのCMだと言っていた。
チョコレートメーカーの名前が書かれたディスクをプレーヤーに入れる。
見なくてもわかった。
チョコレートメーカーは“高城製菓”。
“この中にレンがいる。小さなレンが…。”
映像が映し出される。
雪の降る夜…。
画面の真ん中には大きなクリスマス・ツリー。
ツリーの前には小さな女の子。
“ユイだ。”
ツリーの後ろから顔を出す小さな男の子。
“レンだ…。かわいい。”
キョロキョロと誰かを探す女の子に、男の子が近付く。
後ろから女の子の両目をふさいで…。
“あっ。思い出した!たしか、この後…。”
ユイの顔が赤くなる。
男の子の手を取り、振り返る女の子…。
微笑み合って……。
“きゃぁー。”
ユイは顔を両手で隠して、指の隙間から大きなTVの画面を見た。
かわいいキス……。
『宝物見つけた!』
テロップが流れる。
“恥ずかしい…。恥ずかしすぎる…。”
ユイはヨロヨロと部屋に戻ってベッドに倒れこんだ。
“レンが覚えてなくてよかった。”
唇に手を当てた。
“ファーストキス…。”
枕を抱いた。
“レンと…。”
“レン…。”
ユイは今日の出来事で泣き疲れ、CMの中の自分とレンを思い出しながら眠りについた。
『レン……。』
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