記憶

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『ユイちゃん、だいしゅき。おおきくなったら、ぼくのおよめさんになってね。』 『うんっ。レンくん、だーいしゅき!』 小さい女の子と小さい男の子……。 かわいいキス……。 ガバッ。 ベッドから飛び起きて、今日 見た夢を振り返る。 “最近、よく見る夢…。” “ユイとレンだったんだ…。” 小さな頃に交わした約束を、ユイは思い出したのだ。 “レン…約束も覚えてないのかな…。” そう思いながらユイは、学校に行く準備をした。 制服を着てリビングに行くと、母親がビックリしていた。 「ユイ…?」 「どうしたの、ママ?」 「今日は土曜日よ?学校はお休みじゃないの?」 ユイはハッとしてバタバタと部屋に戻り着替えをした。 “レンにまた明日って言ったから…。” “レンもまた明日って言ったもん…。” ブツブツ言いながらベッドの上に座っていた。 なんとなく恥ずかしくてリビングに行きづらかった。 コンコン―。 「ユイ?入ってもいいかしら?」 “ママだっ!” 姿勢を正してドアを開けた。 母親はニコニコしていた。 「ユイ、早くレンくんに会いたかったんじゃない?」 母親の問い掛けにユイは恥ずかしさを感じ、 「そんなんじゃ…。」 と そっぽを向いて答えた。 「ふぅーん。」 ニコニコとユイの顔を覗く母親に根負けして、 「もぅ。ママの意地悪っ。」 ベッドの上でじゃれ合った。 母親が立ち上がり、クローゼットの中の服を出した。 「ママ?」 「うーん…こっちがいいわ!」 ユイに白いワンピースと白いミュールを合わせて、水色のバッグにハンカチとリップとお金を入れた財布を入れて手渡した。 突然の母親の行為に驚いて目を丸くした。 母親はユイの部屋の電話で内線をかけ、ヘアメイクのスタッフを呼んだ。 「ママ?なんなの?」 母親は答えない。 しばらくしてキレイになったユイに、ニコッとキレイに笑った母親が言った。 「レン君、来てるわ。行ってきなさい。」 ユイは驚いて階段を駆け降りた。 客間ではレンが紅茶を飲みながらチーズケーキを食べていた。
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