記憶

5/8
前へ
/105ページ
次へ
バタバタと客間に入って来たユイに、驚きながらレンが立ち上がった。 「おはよう。映画、見に行かない?」 優しい笑顔で、レンがチケットを差し出した。 ユイは慌てて階段を駆け降りたせいで呼吸が整わない。 肩で息をしながら首を縦に振るユイにレンが近付く。 「せっかくのヘアメイクが崩れちゃうよ?」 と髪の乱れた部分を撫でた。 「ごちそうさまでした。遅くならないように送ってきますから。」 そう母親に告げると、ユイをエスコートして高城家の車に乗り込んだ。 母親に見送られてレンと出かける現実に、ユイの胸は熱くなり、呼吸が整ってからもドキドキは止まなかった。 「レン…今日はどうして?」 と突然のデートの理由を聞いた。 少し間を開けてレンが言った。 「だって、昨日“また明日”って言ったじゃん。」 ユイは思った。 “今日はドキドキが落ち着きそうもないなぁ。”
/105ページ

最初のコメントを投稿しよう!

86人が本棚に入れています
本棚に追加