3/6
前へ
/105ページ
次へ
1年生の教室は4階で、A組は廊下の端だった。 教室に入る前にユイは、 「ママ!大丈夫?変じゃない?」 と聞いた。 「もぅ…3回目よ。大丈夫。かわいいわ。」 と言いながら、緊張する娘にピンクのリップを塗ってあげた。 教室の入り口に席順が書かれたプリントが置かれていた。 それを見てユイは、窓際の後ろから3番目の席に座った。 後ろに並んでいる保護者たちを見て母親にアイコンタクトを送る。 “ママが一番キレイだよ” “かわいいわよ、ユイ” ユイ達親子に注目が集まっていたのは言うまでもない。 保護者の中にユイの母親を知らない者はいなかった。 「あの人、モデルだったMariaよね?」 「結婚して引退したのよね。」 「娘もキレイね。」 中には母親にサインを頼む保護者もいた。 まるで小さな握手会になっていた。 そんな母親を見てユイは鼻が高かった。 でもユイが気になったのは隣の席。 空席が段々と埋まる中、ユイの隣の席は空いたままだった。
/105ページ

最初のコメントを投稿しよう!

86人が本棚に入れています
本棚に追加