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入学式が終わると再び教室に戻りHRが始まった。
たくさんのプリントが配られ、入学前に準備した書類を回収された。
担任の松岡が一通り話終わると一人づつ自己紹介が始まった。
それぞれ、出身中学や高校生活の抱負を語っていた。
高城 レンの順番になると、入学式の眠気がひかないという感じで立ち上がり、
「高城 レンです。………えっと…」
言葉に詰まった高城 レンがユイの方を見て、
「あと、何を言えばいいの?」
と聞いた。
突然の問い掛けにユイは驚いて、
「出身中学とか…抱負とか…」
と小さな声で答えた。
そうか。と、ユイに言われた通りに出身中学と抱負を語り着席した。
ユイは鼓動の音が耳鳴りのように聞こえた。
全員の自己紹介が終わると最後に松岡先生が言った。
「クラス委員は、まだ、推薦もできないと思うので高城くんと大咲さん、お願いします。」
首席入学の二人が適任とされるのは当然だ。
はい。と小さく返事をしてユイは響く心臓の音を聞いていた。
HRが終わり、それぞれが保護者と教室を出て行く。
プリントをまとめ、バッグに入れて母親の元へ行こうとした時、
「大咲さん!」
呼び止められて振り返ると高城レンが立っていた。
「さっき、ありがとう。眠気が覚めなくて…。助かった。」
「これからよろしく。」
高城 レンが右手を差し出す。
「こっ…こちらこそ。」
ユイも慌てて右手を出し、握手を交わす。
手と手が触れた瞬間、緊張がとけて、
“暖かい…。”
自然に笑顔になる。
微笑み合う。
帰りの車の中、ユイは高鳴る胸に両手を重ね心臓の音を聞いた。
懐かしいような甘い鼓動……。
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