序章

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一切の草木もない、広大な湖が広がっていた。 湖は一点張りの水面が広がり、魚の動きもなければ、風の揺れにもその水面は動かずしまいだった。 そんな水面に、小さな波紋を呼んだ。 波紋は広く広くと広がってゆき、やがて消えた。 その波紋の中心には、砂色のマントを翻す者がいた。 目深まで被られたフードが風に揺らめき、バタバタと忙しなくはためいている。 その者の表情を読み取ることは、できない。 が、下へと俯いている顔は、何処か憂いを帯びているような雰囲気を出していた。 風が、一段と強く吹き付ける。 風の流れにそって、身に纏うマントが、流水の如くに流れてゆく。 ふと、風が一時的に止んだ。 それと同時に、俯いていた顔を上げた。 口元を引き締め、手を拳にして強く握る。 その姿は、まるで何かに誓いを立てるようであった。
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