灯火

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「あはは、ゴミみてぇ!」   「調子に乗るな、丸ぅ!」     幼い男児に蹴られ、その痛みにより 全身から這い上がるような苦しみを 味わうことになり半兵衛は 倒れた状態のまま身を屈めては 小さくうめき声を上げた。   まだ生きている。   痛みによった生を自覚するなど おかしい事であろうか。   霞がかった視界の向こう、 織田信長と濃姫は興味を無くしたように 自分の塞いでいた門の向こうへと 消えた…が蘭丸はまだそこにいた。     「ゴミのくせに信長様に逆らうから こうなったんだよ、ばーか!」     あまりにも無邪気な笑い声を 耳を塞いで聞かないようにすることも 今の自分には出来なかった。   瞼を伏せて、楽になるため 体から力を抜き、一度血を吐いた。       「蘭丸君、いきましょう?」   「はい、濃姫様!」       蘭丸が心配であったのか戻ってきた 濃姫は蘭丸を促す。 嬉しそうに濃姫の元に駆け寄り 半兵衛に対し背を向けた 蘭丸の動きが急に止まった。     「…………ゴミなんかじゃねぇよ」    
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