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「蘭丸君…っ!」
崩れ落ちた蘭丸に悲痛の声を
上げながら濃姫は近づく。
蘭丸の動きが止まり前に倒れたのは
前田慶二その人が後ろから
蘭丸を叩き切ったからだ。
子供には手を出さず常に他人を
殺すほど迄攻撃のしたことのない
前田慶二にしては随分と
珍しい事であった。
頭さえ動かすことがだるい中
視界に入るは何かを叫ぶ慶二の姿。
「………………じゃねぇ!」
よく聞こえないが、それは
濃姫に対して言っているようだ。
「何故、…前田の甥が私達を裏切るの?!」
「利達は関係ねぇよ、…っ俺は」
先程まで聞こえなかった声が
耳に鮮明に伝わるのは
死が近づいているからか
感覚が冴えてしまったからか
「惚れたやつは死んでも守るもんだ!」
この間まで惚れた女と言ってたやつが
この間までねねと叫んでたやつが
この間まで僕に憎しみを持ってたやつが
笑わせてくれる
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