聖夜の客は招かれざる者

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 浮かれていたと言えば浮かれていたのだろう。  長い努力の成果が実を結び、多くの幸せを配る事が出来た。  サンタとしての英才教育を受けてきた彼女としては、無上の喜びだった。  あまりにも上手く事が運び、油断したのかもしれない。  最後の一件というところで、突風に煽られ、ポケットにしまっていた制御装置とも言える。もみの木のリースを落としてしまった。ソリは制御不能。  過酷な労働に不満を持っていたトナカイは、これ幸いと、たまたま窓の開いていた和樹の部屋に彼女を放り込み、煌めく星々目指し駆けて行った。  ピッキングの道具はソリの中、姿を隠す事も出来ず、和樹の家へ彼女だけが不時着し足を滑らせ窓枠にぶら下がり、今に至る。 「と、言う訳です~」  にこやかに彼女が言った。  直後、和樹のハリセンが勢い良く頭に振り下ろされた。 「ツッコミ所が多すぎるわあ! どう考えても犯罪組織だし。鹿は空飛ばないし! 大体ピッキングなんてどこで教えて貰うんだよ! あれか、サンタには養成所でもあるのか! 訳分からん、帰れおまえ」
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