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一週間くらい経った、食堂でいつもの如く、あいつはカレー、俺はきつねうどんを啜っていた。やはり、よくよく考えてみると狐が憑いてるのではないか、そいつのせいで、いつも一緒に居るあいつは狂ってしまったんじゃないか、などと向かいに座ってカレーをモサモサと食べている廃人のようになった鹿山を見つつ、茫然と考えていた。
すると、横に居た、騒がしい女子学生の話しに耳をとられた。
「同じゼミの氏川清子って子逮捕されたらしいわよ?」
「えっ?あの宗教関係の家の子?」
「そうそう、その宗教、有る事無い事でっち上げて恐怖心を煽って金毟り取る詐欺集団だったんだって。」
「加担してたわけね?怖いわ。やっぱ普通の子じゃなかったのね。」
すると急に、鹿山が米を噴き出して大声で笑い出した。
やはりだ、馬鹿らしいことじゃないか!詐欺師にまんまとコントロールされていた。信じかけたのが情けないやら、氏川のばけの皮が剥がされたのが嬉しいのやら、なんだか居たたまれない気分になり俺はうつむいていた。
ふと笑い声に耳を傾けた、あいつのその声は狂人のそれでは無く、よく知っている、いつもの鹿山の笑い方になっているのだ。一瞬であいつは狐の国から戻って来ていた。顔を上げ
「おい!お前が噴いた米が、きつねうどんに入ったじゃねぇか!!」
と言ったが最後。全てがどうでもよくなり、俺も狂ったように体をくの字に曲げてはお越し、腹がよじれるほど笑い出した。
二人の笑い声がいつまでも、延々と、飽きることなく食堂に響き渡った。
完
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