きつねうどん

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 黙り込んで一向に喋る気配がない。鹿山はあたふたして落ち着かなくなった。俺もしかりだ。「氏川さん、どうしたの大丈夫?」 すると急に顔をむくっと起こし 「私帰るわ。とても無理よ。だってあの人、憑いてるじゃないの!」  言うなり立ち上がり、スタスタと出口に向かい、 「鹿山くんもその人と関わると危ないわよ。それじゃあ。」 と吐き捨てて帰ってしまった。 なんて失礼な奴だ!何が見えるか知らないが、間違い無く狂っているのは氏川の方だ。俺はアーティストだが常識は持ち合わせているつもりだ。アイツは何だ、こんにちわ!よろしくね?の簡単なご挨拶さえ出来ずに、人を見るなり憑いてるだの、気を付けろなど、第一印象で俺を全否定だ。 「噂以上にサイコだな?」 「いや、普段はもっとマシなんですけどね。神山さんなんか憑いてるんですか?」 「馬鹿野郎!んなもん信じた事もねぇよ。」 「ですよね。」  役者が決まらずに困った、困ったと、グダグダと喋り、酒を飲みながら二人ともいつの間にか寝てしまった。二、三時間は経っただろう。 「うわぁああ!」 急に鹿山が大声を上げて飛び起きた。 「おい!どうした?驚くじゃねぇか!」  計り知れない恐怖に、目の色を変えて 「神山さん憑いてますよ。やっぱり。」 「洗脳されやがって。馬鹿じゃないのか?夢だよ!夢!寝るぞ。」  チッっと舌打ちし、毛布に潜り込んだ。しかし、憑いてると言われては、やはりいい気はしない。気になってしまったのである。 「ちなみにどんなの憑いてた?」  毛布から顔だけ出して聞いてみた。 「狐ですよ。」  さっきと同じ姿勢のまま震ながら鹿山は答えた。  立ち上がり蛍光灯を付けた。 「ばかばかしい!」何が狐だ。憑くと言えば狐なんて、なんとも安直な想像力。俺は煙草をに火をつけ何気なく 「電気消したの?」と聞く 必要以上の大声でリアクションをして 「えっ!神山さんが消してくれたんじゃないんですか!?」「うるせえよ!そんな大声出すな。」 「そ、そんな、まさか、僕が先に寝たはずなのに、神山さんが消した記憶にないなんてきっと狐・・・」 「もういいよ!夢だよ!夢。何が狐だよ。」 暫く黙ったが、すぐ片手を上げ蛍光灯を震えながら指差し「コレは?」と言った。 「さぁ?」俺は答えた。
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