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どこを向いても、暗い闇ばかり。
ユロウはどこにいるだろう? 無事だろうか?
『お前は間違っていた』
突然聞こえた声に、俺はハッと息を呑んだ。
『ユロウンをヴァンパイアにしてはいけなかった』
また声が聞こえ、俺は恐る恐る振り返る。
そこには俺を見詰める、もう1人の俺がいた。
もう1人の俺が、冷たく微笑む。
『お前は間違いを犯した。ユロウンをヴァンパイアにしてはいけなかった』
呑み込まれそうになる意識を、俺は必死に引き留めた。
「ユロウンは、自分から生きたいと望んだんだ!」
俺の言葉に、もう1人の俺が低く笑う。
『それは違う。死にかけた弱い人間が、一次の感情で生きたいと願うのは当然だろう?』
もう1人の俺が、嘲りを含んだ笑みを浮かべ、真っ直ぐに俺を指差す。
『お前は、そこに付け込んで、ユロウンに人の道を外させた!』
その言葉に目を見開いた俺は、何も言い返す事ができなかった。
その言葉は、一番聞きたくない!
「やめ……ろ………っ」
声が震える。
『お前は、ユロウンを人の道から外させた。何も知らないユロウンを、ヴァンパイアにした!』
「やめてくれっ――!」
心臓の音が酷く、早く大きく聞こえる。
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