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ユロウは出口を探し、闇の中を歩き回っていた。
しかしどれ程歩いても、全く出口らしい物は、見付からない。
「ここはどんだけ広いんだよ!」
そう叫んでみても、いつも答えてくれるキルリオはいない。
ユロウは重いため息をついた。
キルリオがいないだけで不安になってくる。
「キルリオ……」
『助……けて……』
不意にユロウの耳を、どこかで聞いた声が、そっと掠める。
気になって声の方へ行くと、そこには膝を抱えた自分がいた。
今より幾分か幼い。
どこかで聞いたはずである。
その声は、自分と同じ声なのだから。
ユロウがもう1人の自分に触れると、それは顔を上げた。
ずっと泣いていたのか、目が赤くなっている。
『助けて……。僕、もうすぐ病気で死んじゃう。でも僕、死にたくないよ!』
泣きながら訴える自分の姿に、ヴァンパイアになる前の自分が重なる。
ユロウはそっと、幼い自分を抱き締めた。
「大丈夫。もう、大丈夫だよ」
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