解放の夜明け

12/22
前へ
/40ページ
次へ
 ユロウは出口を探し、闇の中を歩き回っていた。  しかしどれ程歩いても、全く出口らしい物は、見付からない。 「ここはどんだけ広いんだよ!」  そう叫んでみても、いつも答えてくれるキルリオはいない。  ユロウは重いため息をついた。  キルリオがいないだけで不安になってくる。 「キルリオ……」 『助……けて……』  不意にユロウの耳を、どこかで聞いた声が、そっと掠める。  気になって声の方へ行くと、そこには膝を抱えた自分がいた。  今より幾分か幼い。  どこかで聞いたはずである。  その声は、自分と同じ声なのだから。  ユロウがもう1人の自分に触れると、それは顔を上げた。  ずっと泣いていたのか、目が赤くなっている。 『助けて……。僕、もうすぐ病気で死んじゃう。でも僕、死にたくないよ!』  泣きながら訴える自分の姿に、ヴァンパイアになる前の自分が重なる。  ユロウはそっと、幼い自分を抱き締めた。 「大丈夫。もう、大丈夫だよ」
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加