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目を閉じたキルリオを、もう1人のキルリオが包むように抱えている。
抱えている方のキルリオがユロウに気付き、冷たい微笑みを浮かべた。
その瞬間にユロウは、目を閉じている方が、本物のキルリオだと覚った。
本物のキルリオは、そんな冷たい微笑みなんか、絶対にしない。
少なくとも、ユロウにだけは――。
けど……だったらなぜ、黙って抱えられているのかが、わからない。
まさか、もう……
「キルリオ……?」
ユロウが戸惑いながら声をかけると、本物のキルリオがピクリと反応した。
静かに目を開けたキルリオが、虚ろな目で、ユロウを見上げる。
「ユロ……ウ……」
キルリオが弱々しい声を漏らし、偽のキルリオが、そっと耳打ちする。
『そうだ。ユロウが、ヴァンパイアにしたお前を恨んで、ここに来たんだ』
その言葉に、キルリオがビクッと震え、頭を抱えて縮こまる。
「すまない……ユロウ……すまない……」
明らかに動揺しているキルリオが、何度もそう繰り返し、涙を流した。
そのキルリオの様子に、ユロウは息を呑む。
今まで、こんな弱々しいキルリオは見た事無い。
不意に偽者が、キルリオのあごを掴み、無理矢理上向かせた。
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