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一転目を怒らせたユロウが、俺の襟首を離し、今度は腕を掴む。
「確かに、ヴァンパイアになって、辛い事や大変な事もあったさっ。だけどそれは、死んだらできなかった事なんだ!」
不意にユロウがうつむき、絞り出すように言葉を続ける。
「キルリオがいたから、今の俺は、ここにこうして生きてる」
顔を上げたユロウの、訴えるような目が、真っ直ぐに俺を見詰めた。
「だからその度に俺は、生きてる事が実感できて、凄く嬉しいんだ」
「ユロウ……」
ユロウの純粋な言葉が、温かく俺を包んでいく。
「それに」
そう言って、ユロウが優しい微笑みを浮かべる。
「どんな事があっても、生きたいって言ったのは俺なんだ。だから、もう気にすんなよ、キルリオ」
その言葉に俺は、胸中に渦巻いていた闇が、静かに解けていくのを感じた。
「そうだな……ユロウ」
ニッと笑ったユロウが、俺の頭を撫でた。
子供扱いされているようにも感じたが――それが、俺の迷いを許す行為に感じられ、少し幸福だった。
「行こうぜ、キルリオ。今度こそ、ナイトメアを倒すんだ!」
「あぁ。この悪夢の礼もしないとな」
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