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「気が付いたね」
しばらくして目を覚ますと、見知らぬ少年が俺を見ていた。
気付けば傷の手当てもされている。どうやら俺は助かったらしい。
「大丈夫?」
「あぁ――。これくらい、何とも無い」
もっとも、腕はザックリと斬られていたが――。
「けど、酷い傷だったじゃないか」
本気で心配する少年に、キルリオは一瞬、呆気にとられた。
「いいのか? 俺を助けたりなんかして。俺はお前らの恐れる、ヴァンパイアだぞ?」
それでも緊張感の無い少年に、俺はわざとらしく牙を見せ付けた。
「お前の血を吸ってやろうか?」
「別にいいよ? その方が、母さんも楽になると思うし」
その少年の言葉に、俺は毒気を抜かれた。
「そんな事は無いだろう。……もっと、命を大事にしろ」
「だって俺、病気で長く生きれないもん」
笑って言う少年に、俺は驚きを隠せなかった。
「病気って――そんなに悪いのか?」
頷く少年が、少し悲しそうな顔をした。
「不治の病だって……。余命半年って言われた。だから――」
少年が静かに微笑む。
「ヴァンパイアに血を吸われれば、もっと生きられるだろ?」
俺は、ただ言葉を失っていた。
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