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少年は名前を、ユロウンと名乗った。
俺は時々ユロウンの所へ行き、他愛も無い話を楽しんだ。
だがその数日後。
ユロウンは発作を起こし、ベッドの上でもがき苦しんでいた。
母親がユロウンの手を握り、泣きそうな顔で祈っている。
すると不意に、ドアベルが鳴った。
初め母親は出ようとしなかった。
しかしドアベルは、引っ切り無しに鳴り続ける。
そしてとうとう母親は、ユロウンの側を離れた。
俺はそっと、部屋に忍び込んだ。
発作で何度も息を詰まらせるユロウンが、苦しそうな目で、俺を見詰めた。
「……生きたいか?」
俺の言葉に、ユロウンが何度も頷く。
「全てを捨てても、生きたいか?」
繰り返す俺に、ユロウンが必死に口を開いた。
「生、き……たっ、い……っ!」
そして母親が戻ってきた時には、そこにユロウンの姿は無かった。
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