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……今までに感じたことの無い、異様な感覚が朧気な意識をねっとりと摩る。
(……なん、だ)
妙な感覚を感じたあと、目の前は朱く染まり、熱気が身体を包み込んでいった。
ぼんやりとしていた視界が、徐々にはっきりとしたものに変わっていく。それと同時に、紅蓮に燃え盛る炎が見えてくる。
火事だろうか……。
そんなことを思いながら、真はその場から逃げようと足を上げる。
だが、真の足の裏は床にピッタリと張り付いたままでまったく上がらなかった。
今度は手で足を掴んで引っ張り上げようとしてみた。しかし、それでも微動だにしなかった。
そうしている間にも炎は勢いを増していき、辺りには巨大な火柱が次々と立っていった。
這うように燃え広がっていく火炎は全てを灰に変えようとしていた。
真は、その場に立ち尽くしながら、その様子をただ見ていることしか出来なかった……。
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