心を見る瞳

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「ありがとう。」 そのうえ、前の一言での気持ちのもやもやをはらすために、聞きたいことがあったから、少しだけ話を聞いてみることにした。 少し・・・だけ。 「話って何?」 「いきなりなんだけど・・・。別につらいことは言わなくてもいい。前に何かあったんだよね?死にたいほどつらくなることが。」 「・・・。」 「いつでもいい。言いたくなったら言ってほしい。そしたら、きっとすっきりするから。」 「どうして・・・そう思う?」 「?」 「どうして、そんな事があったと思う?」 「君の瞳は死にたいといった時、揺るがなかったことと、その瞳が死に満ちていることが見て取れたから。」 「だから、何?」 「普通の人が病気になれば、死ぬことを怖れて、病院の先生にすがって生きたいと思う気持ちが芽生えるのに、それが見られなかったから。」 「そんなの、人それぞれの考え方の違いよ。」 「そうかもしれない。でも前に何かあった?って言ったとき、少なからず驚いていたみたいだから。」 「どうして、そんなことがわかる?」 「その時の態度が変わったからね。」 見透かされている。全く無表情で何も変わらないそぶりをしていたと思っていたが、少しだけ態度が違ったようだ。 洞察力に優れている。
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