心を見る瞳

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「すごく好きな人だった。」 「初恋?」 「うん。そうだった。」 「そうかぁ。」 「すごく、辛かった。毎日が嫌になった。そして、私は、心の支えだったものも失い、人を信じることも好きになることも無くなった。心・・・感情を失ってしまった。かなしい、寂しい、苦しい、怒り、嬉しさ。色んな感情を感じることは無くなった。それはそれで平和な日々だった。でも、人に必要とされない、邪魔者扱いに、もう嫌気がさしてきて、ここから居なくなってしまいたいと思うことが普通になった。そして今、病気・・・腫瘍ができたとき、やっとこんな日常に終わりがくると思った。今でも、生きたいと思う気持ちはない。こんなつまらないところにいるよりだったら死んだ方がマシだ。」 「そんな風に思ってたんだ。」 「そう。」 「君のことがいろいろわかったよ。ありがとう。」 「べつに。」 「今日はもう遅い、帰ろうか。」 そして、病院の前まで連れて来てもらって、そこで別々に帰った。帰り道どうして自分はあんなやつに話したんだろう。・・・あんなこと話したからってどうなるわけでもないのに・・・。そんなことを考えていた。
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