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「いやぁー、千鶴ちゃんはほんっとうに可愛いなぁオイ!」
と、大道寺が俺の妹を絶賛する。毎朝これを大道寺はかかさない。
「可愛くねぇよ。あんな女。今日なんてアイツ『そんなんだから女の子にモテないんだよー』なんて言って来たんだぜ?」
「なんだ、事実じゃないか」
ははは、と笑う早乙女に「テメェっ!」と殴りかかるが軽く返される。
「ふっ、拳に力が入ってないぞ万次。それじゃあやっぱり女の子にはモテないな!」
「うるせぇ!テメェもモテててねぇだろうがよぉ!!」
「俺はモテないのではない。チャンスがないだけだよ」
変わんねぇよ!!とつっかかる俺を大道寺が抑える。
俺たち三人、全然モテない。入学当初、中学からの友達だった大道寺と、一番男前な奴と仲良くなっておけば俺たちもモテると思って話しかけた男が早乙女。
悔しいけど男前な顔立ちだし、スポーツも出来れば頭もいい。
俺は自分で言うのもなんだがブサイクではなければ、それなりに誰とでもしゃべれるし、大道寺はたまに目がイッちゃったりするがクラスの人気者だ。
彼女の一人や二人出来たっておかしくはないのだ。
本当に悩んで担任の先生に一度聞いたことがある。
その時先生が言ったことは「如月、お前は普通すぎる」とのことだった。
大道寺には「女の子はお前に悩みは言えないと思う」だったし、早乙女には「お前の顔は先生が学生の時には人気者だったな」とのこと。
あの日そのあと三人で海で叫んだことは忘れられない。
「なぁ」
ポケットに手を突っ込みながら、「どうして俺たち、モテないんだろうな」と空を見ながら呟く。
なにも答えは、生まれなかった。
続く………
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